ガッデム!(NHK杯 佐藤(康)-中井女流戦)

はい、今日は将棋の時間です。
本日のネタは、こないだの日曜日に放送された佐藤(康)棋聖-中井女流二冠戦。
いつものように長くなりますのでご了承をば。

NHK杯公式戦では初となる、男女タイトル保持者の激突。
非公式戦のいわゆる「お好み対局」ではよくあることだが、これはガチの勝負。
持ち時間の少ないテレビ対局では事件も十分ありうる。
将棋ファン、業界、注目の一局。

佐藤康光棋聖は羽生二冠、森内三冠らと並び評されるトップ棋士の一人。向かうところ敵無し、タイトル狩りロード驀進中だった森内三冠を婚約パワーで撃破(爆)し、先日めでたく式を挙げた。常時メガネ着用(笑)、趣味はバイオリン、歌舞伎役者の弟に似た面長で端正な顔つき、というといかにも理論派なイメージがあるが、この人が棋界屈指のハードパンチャーなのだから世の中わからない。王様をがっちり囲ってから、攻め合いで王様が露出してからが本領発揮。スパロボに参戦させるなら、ガッツ底力は必須事項だ。
一方中井女流二冠は、清水女流二冠と共に長年女流棋界を代表するトップランナー。平成5年に初めて男性棋士に公式戦で勝利するなど、その実力は男性棋士にも一目置かれるほど。今回のNHK杯でも、すでに若手の曲者、佐藤(秀)六段を血祭りに上げている。棋風はバランスの取れた居飛車党。夫の植山六段と三人の娘を影で支えるママさん棋士としても有名。
さて将棋の方は、先手の佐藤(康)棋聖に固さが見受けられる立ち上がり。

b0017164_11561882.jpg居飛車ならなんでも指せる二人のこと、△3四歩と後手の中井女流二冠が横歩取りを打診したのを受けて立つかと思いきや、佐藤(康)棋聖は図の▲6六歩
やだやだやだ、矢倉じゃなきゃボクちん死んじゃう!(死んでこい自分)な手。部分的には、本譜のように後手からの飛先交換を防ぎにくいため、あまり指されないのだが、勝って当たり前、負ければ末代までの笑い者な立場の佐藤(康)棋聖としては、今日は青春を賭けて磨き上げた矢倉と心中する覚悟を示した一着。

佐藤(康)棋聖は、雑誌「将棋世界」10月号の取材で、「これは私も中井さんの将棋を勉強しなければ」と、早くから中井女流に脅威を感じていた。
ただ、いくら女流棋士が強くなったとはいえ、男性のトップ棋士とはまだ差があるのが実情。たとえば今日解説の先崎八段みたいに、弱い女流と将棋を指してお金がもらえる、ラッキーくらいに気楽に考えられれば負ける要素はないはずなのだが、真面目な佐藤(康)棋聖のこと、そんなにお気楽でいられるはずもない。
まあ、こういう人だから、NHKもあえてぶつけたんでしょうね、きっと。
ちなみに、先ほどの先崎八段は羽生二冠、森内三冠、佐藤(康)棋聖らとは小学生時代からのライバル。このメンバーらと先輩の島八段の下、伝説の研究会島研(マンガで言うならトキワ荘に相当)を組んだことでも知られている。今回の対局は、奴が苦しむところを、生でじっくり見てやろうと解説を志願。佐藤(康)棋聖も、先の「将棋世界」の取材に「それは純粋な動機からとは思えませんがね」と答えている(笑)

b0017164_1233575.jpgそんなこんなで戦いは中盤戦に突入。図の▲1四歩の取り込みが大きく、佐藤(康)棋聖優勢かと思われたのだが、中井女流二冠も平然と△1二歩と受けてから佐藤(康)棋聖の玉頭へ殺到。もともと私は私、あなたはあなた突撃をかけるのは女流のお家芸。これが決まって中井女流二冠優勢となり、歴史的瞬間を見られるかと思ったのだが・・・。


b0017164_12461443.jpg追い込まれた佐藤(康)棋聖だったが、この土壇場になってガッツ発動。図の▲7九歩は佐藤(康)棋聖ならでは勝負手。すでに持ち時間を使いきり、長い間秒読みで指していた中井女流二冠は、残念ながら明確な寄せを見逃し、無意味な受けに回ってしまう。中井女流二冠、無念の投了。


敗れた中井女流二冠だが、この一番は予想を上回る好局。女流棋士の励みとする上でも、女流棋士枠を2つとかにしてもらえないかと思う今日この頃。
佐藤(康)棋聖は、冷や汗が止まらなかったことでしょう。お疲れ様でした。
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Commented by hosokawa18272 at 2004-11-10 23:11
何気にみつぼし氏の将棋ネタ、面白いんですけど。
「やっぱ、将棋も格闘技だよなあ」と、思わせてくれます。
なかなか、ふだん棋譜の解説なんて読む機会ないですし。
ちなみに、みつぼし氏の得意戦法は何だったのかね?
Commented by mitsuboshi03 at 2004-11-11 09:15
コメントどうもっす。
何気に一番労力を使うネタなので、レスがあるとありがたいです。

今回のはまさにガチな格闘技みたいな対局でしたね。
もっと穏やかになる場合もありますし、ミリ単位のずれも許されないような細かい将棋もありますし、いろいろです。
そのへんをまた、機会があれば紹介していきたいと思います。

私は今回のような矢倉が好きですね。
私が将棋を始めたころは、とにかく矢倉をまず覚えろ、って時代でした。
振飛車は居飛車穴熊という天敵がいましたし、横歩取りなどもそれほどメジャーではなかったです。
ちょうど羽生世代もこんな時代に育ってますんで、彼らが一番得意なのはやはり矢倉になりますね。もっとも、彼らは振飛車だろうが横歩取りだろうがなんでも指しますけど。

by mitsuboshi03 | 2004-11-10 11:53 | 将棋 | Comments(2)

スポーツ、将棋、ミリタリー、オタクネタ、地元長野ネタなど節操なしに書きまくります


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