なつやすみのしゅくだい(王位戦 第4局)

大多数のみなさまは、子供のときはこの時期宿題にひーこら言ってた思い出があるかと存じます。
終わってしまえば良い思い出(苦笑)
ちなみに、長野県では夏休みは18日前後で終了(本当)のため、この時期まで宿題を引っ張ることはありえませんorz

内容のある記事にしようと今回は将棋ネタ。
書きかけだった王位戦第4局をリリースします。
なにせ明日から第5局ですので(ぉ
これも私の夏休みの宿題orz

さて、王位戦を戦う佐藤棋聖にも、夏休みの宿題はありました。
ここまで1勝2敗なのはまずまずと言えますが、先手番だった緒戦を落としているのが痛くテニスで言えばワンブレーク・ダウンな状態。この第4局も落としてしまうと王位奪取のためには3連勝が必須条件。去年も同じ羽生三冠相手に3連敗からの3連勝をやっているとはいえ、奇跡をあてにして戦略を組み立ててはいけません
この大事な第4局を後手番で戦わなければならない佐藤棋聖が頼りにしたのが、今回採用したゴキゲン中飛車戦法でした。棋界屈指のオールラウンダーで知られる羽生三冠がここ1年苦手にしている戦法であり、一方佐藤棋聖には、先日行われた棋聖戦5番勝負でこの戦法を相手にしたときの経験がある。命運を託すにはうってつけの戦法といってよいでしょう。
戦いの舞台は、佐賀県唐津市の『唐津ロイヤルホテル』。西日本新聞主催ということで、毎年1度の楽しみである現地での大盤解説会のweb中継を堪能できました。感謝。
なお手の解説には、上記のweb中継及びBS2の『囲碁将棋ジャーナル』での中村八段の解説を参考にさせていただきました。

b0017164_19342960.jpg佐藤棋聖のゴキゲン中飛車への羽生三冠の回答は、今では古風とされる▲7八金型の採用でした。現在では▲7八金のかわりに▲2二角成△同角▲9六歩という新丸山ワクチン+佐藤新手が圧倒的に好まれているのですが、「困ったときには古典に戻れ」という今作った格言(爆)に従った気が。それと、名前でピンときた方も多いでしょうが、この佐藤新手の創始者は誰あろう佐藤棋聖その人。相手の土俵にあっさり乗るには研究が足りなかったのかもしれません。
ちなみに▲7八金型の弱点は、王様を堅く囲いにくいこと。後々、羽生三冠はこれに苦しめられることになります。

b0017164_2031328.jpg少し進んで、佐藤棋聖が△2六歩と打ったのがこの図。この後△3三桂~△2一飛~△2四飛~△2七歩成と2筋を逆襲する狙いが実現してはゲームオーバー。ということで羽生三冠は「角をどかして2六の歩を取りますよ」と▲6五歩と角交換を強要してきましたが、佐藤棋聖は平然と△7七角成▲同桂と交換した角をすぐさま△2七角と打ちつけ、馬を作ることに成功。これだけならまだともかく、金取りから逃げた▲4八金が後々問題になる一手。以後、この4八にいる金が佐藤棋聖の戦略目標となりました。

b0017164_20445651.jpgまた少し手が進んで、羽生三冠が▲6七銀と指したのがこの図。羽生三冠が虎の子の角を5七に手放してまで2筋逆襲の徹底防御に成功。この後攻めにも守りにもいまいち効きの悪いうだつの上がらない3六の銀と4八の金(笑)を上手く活用できれば・・・と考えていたであろう羽生三冠、この直後に指された△4四歩を見て「やっぱりね」と思ったでしょうか。
佐藤棋聖の立場から言えば、相手の遊んでいる金銀が働き出す前に攻めるのは当然。王様の囲いも佐藤棋聖の方が現状固いですし、一見先手同様遊んでいるように見える2二の銀と3二の金も、先手の飛車筋を抑えている分先手の金銀よりは罪が軽いのです。

b0017164_20551119.jpgまたちょっと手が進んで、羽生三冠が▲4六角と歩を払ったのがこの図。この手で後手の攻めが一段落するなら羽生三冠ペースなのですが、なんでも攻める佐藤棋聖が許してくれるはずもなく、まだまだいくよー!と△3五歩▲同角△同馬▲同銀と虎の子なはずの馬を惜しげもなく交換。ここで△2七歩▲同飛と飛車を浮かせてから△4五飛とすれば金銀両取りとなってはっきり佐藤棋聖ペースだったようですが、実戦では単に△4五飛だったため4八の金に飛車が利いている分、▲3四銀と逃げられてしまいました。佐藤棋聖は、ことここに至ってはやむをえんだろうと△3九角と非常スイ~ッチをプッシュ。一直線の殴り合いは佐藤棋聖の望むところとはいえ、なにぶんお互い限りなくノーガードに近い囲いなので、一手のミスが命取り。まだまだ予断を許さぬ状況です。

b0017164_21125262.jpg先ほどの△3九角から互いに飛車を取り合ったあと、佐藤棋聖が銀を取る間に羽生三冠が▲6四歩から▲5四角と後手陣に揺さぶりをかけつつ両取りをかけたのがこの図。ここから大盤解説の手が当たらなくなりました(笑)
まず取られそうな金と桂馬をほっといて△5二銀と守ったのがまず「えー」。また、それに対して金を取らずに△4五角と桂馬を取ったのがまた「「ええー」」。さらにこの場面で解説を務めた副立会人の真田七段が懸賞付次の一手で▲4六飛を推奨していたのですが、佐藤棋聖が駒台からつまんだ飛車を打ち下ろしたのは4六ではなく4二。これを選んだお客さんはゼロ(ぉ
まあでも種明かしをしてしまえばすべてプロらしい順当な一手。まず△5二銀と受けないと▲6三歩成から▲6二歩の攻めが厳しいので受けるのはこの一手。次の▲4五角は、後手の狙いの一つである△5七桂成を受けつつ、佐藤棋聖の囲いに角の睨みを利かすプロらしい一手・・・ではありましたが、▲3二角成と現ナマをいただいておくのも有力だったとのこと。そして▲4六飛だと、実戦通り▲6三歩成△同銀右▲同角成△同銀右と進んだときに▲4七歩と飛車取りで4八の金を助けられてしまうためよくない、とのこと。

実戦では▲4七歩のかわりに▲4三歩△同飛。ここで▲5五桂と打てれば先手も相当やれるのですが、さすがに△4八飛成と金を取って飛車が成られてはダメと泣く泣く▲4九歩。佐藤棋聖、ゴールが見えてきました。

b0017164_21355450.jpg図の▲6二歩が敗着とのこと。6七に歩を打って馬の利きを受ける手がなくなってしまいました。かわりに▲5三銀成なら難しかったとのこと。あとは佐藤棋聖が△6一歩▲同歩成と小粋な手で一手の余裕を得たあと、△8六桂からの華麗な寄せを見るばかりとなりました。

全体的に、羽生三冠が持ち前のゆったりした展開に持ち込もうとした瞬間に、ことごとく佐藤棋聖ががおーと殴りかかるのに成功したのが勝敗を分けたかと。佐藤棋聖が、序盤のリードを守りきった一番でした。
やはり好調な佐藤棋聖相手にまともに殴り合って、立っている者は地球上に存在しないことの証明になったかと(笑)

佐藤棋聖は不利な後手番での勝利で見事ブレークバック。再び3番勝負に持ち込むことに成功しました。昨年同様に棋聖戦・王位戦・王座戦のトリプルタイトルマッチを戦い、さらに昨日は竜王戦挑戦者決定3番勝負の緒戦で丸山九段に快勝。ここ数年の夏棋界は、佐藤棋聖を中心に回っているといっても過言ではないでしょう。この勢いがどこまで続くか、注目です。
一方の羽生三冠、ゴキゲン中飛車という弱点を抱えたままでは今後の戦いを戦い抜くことは不可能。対策が待たれます。なお、この局でも割と終盤あっさりと指すように見えましたが、これは最近の傾向。以前は不利な局面でも極限まで手を拾い集める努力を惜しまず、それがいわゆる「羽生マジック」として結実していたのですが、20代に比べて体力が落ちた今では、それをやってしまうとMP不足でぶっ倒れるため、ある程度以上不利な局面ではあっさり指すことが多くなりました。

「7割勝つために、3割捨てる」
これが30代の羽生スタイル。

第5局は、明日徳島市の「渭水苑」で行われます。
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by mitsuboshi03 | 2006-08-29 21:53 | 将棋 | Comments(0)

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