棋聖戦のいちばん長い日(挑戦者決定戦 羽生四冠vs三浦八段)

昨日行われた棋聖戦の挑戦者決定戦。
いや、物凄い激闘でした。
なにしろ長い戦いでしたので、前置きは手短にしていきなり本題へ。

羽生四冠はもう何度も何度も何度も出てくるので紹介は省略(ごめんなさい)
三浦八段は群馬が生んだ研究の鬼。
故郷の群馬で、今も対局以外の日は一日10時間の研究を欠かさないという逸話を持つ若手実力派の一人である。

それは1996年、羽生七冠誕生フィーバー直後のこと。
羽生七冠を誰が止めるか。
さまざまな候補が浮かんでは消える中、この年の棋聖戦の挑戦者に名乗りを上げたのが当時五段だった三浦であった。1995年にも同じ棋聖戦で羽生棋聖に挑戦した実績もあり、全くの無名というわけではなかったが、この年に0-3で無残に敗れ去っていたこともあり、無敵の七冠王を相手にするにはあまりにひ弱過ぎると思われていた。
ところがいざ5番勝負が始まってみると、三浦が大方の予想をはるかに上回る戦いぶりを見せ、勝敗の行方を最終局まで持ち越す健闘を見せる。これだけでも十分賞賛に当たるのだが、三浦はさらにこの最終局も制し、驚きのタイトル奪取を果たした。
幾多の勝利の末果たされた七冠の偉業は、たった一人の伏兵によりあっけなく潰え去った。

因縁の対決、再び。
先の対決を思えば、昨日の熱戦を予想してしかるべき。
うかつだった。

ネットでライブ鑑賞の誘惑を振り切って会社へ。
こんなときこそ定時退社!の思いも虚しく、
帰りがけに別の工場へモノを届けることに。
まあ、近場だし、直帰もできるので全然たいしたことないですが。

用事を済ませて帰ったのは午後6時半ころ。
持ち時間各4時間のこの戦い。普通なら5時くらいに終わっていても不思議ではない。
「もうとっくに終わってるよな~」と嘆きつつネットに繋ぐと、盤面はこんな感じになっていた。
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「こ、これは・・・持将棋でつか?

持将棋。
今回のように互いの王様が敵陣に進出し、互いの王様を詰めるのが困難だと判断した場合に、互いの合意によって戦いをそこで止めることである。今回のように形勢が何度も入れ替わる泥仕合になった場合にごくマレに適用されるルールである。
持将棋になった場合、勝敗を分けるのは盤面にある自分の駒と持ち駒。
その駒たちを、
飛車・角  =1枚5点
玉      =0点
その他の駒=1枚1点
のルールで得点化し、もし片方が24点未満ならそちらの負け、互いに24点以上なら引き分けで先後を入れ替えて再試合となる。
※プロのルール。アマチュアは上の24点を27点に替える。
持将棋模様になった場合は、下手に玉を追いまわして駒を取られるのは禁物。
たとえ歩1枚でも取れる駒はすべていただく。
それは、格調高い騎士道の戦いではなく、血で血を洗うゲリラ戦。
点数の足りない側が20点、21点、22点・・・と点数を積み重ねていくさまは欽ちゃんの仮装大賞を思わせる(爆)
今回の対局では、点数の足りない羽生四冠が20点前後から手練手管でなんとか24点を確保し、午後9時10分に指し直し局が行われることとなった。

持将棋になった対局では、後手番の羽生四冠が流行の後手番一手損角替り戦法を選択。
指し直し局で後手番になった三浦八段は、ここですでに死に絶えたと思われていた横歩取りを採用。先に行われた竜王戦7番勝負での手順をそのままなぞっていく。
手順が変わった所での攻防は羽生四冠が制したようで(すいませんこの辺の詳しいところは他の方の見解待ちです)、そのままあっさりいくかと思ったのだが・・・。
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この▲5一とが悪手。普段の三浦八段なら△7八金▲同角△同桂成▲同金△同飛成▲同玉△5八飛以下の寄せが見えていただろうが(せんすぶろぐさん、感謝です)、披露困憊の三浦八段はこの手順を見逃し△4八飛打。千載一遇のチャンスを逃し、以降は羽生四冠ペースのままゲームセット。
持将棋局195手、指し直し局149手。終了時刻は日付が変わって0持38分。
棋聖戦のいちばん長い日は、羽生四冠の勝利で幕を閉じた。

産経新聞の無料web中継は、渋滞もなく更新も早い理想的な中継で好評だった。
が、今回の対局こそ、現場で見てみたい対局だった。
普通羽生マジックが決まればそのまま逆転負けのはずだが、持将棋にしか持ち込めず。
7~80手で終わるはずの横歩取りの将棋が149手までかかる。
普段なら見えていたはずの寄せを見逃す。
羽生四冠と三浦八段の間にしかない気の流れがそうさせたのか。
棋譜だけでは、その場の凄みまでは伝わらない。

持将棋局では三浦八段の研究が見事にハマって必勝の場面もあっただけに、悔しさもひとしおだろうが、チャンスはまだある。また頑張って欲しい。
羽生四冠は1日制のタイトル戦に圧倒的な成績(王座、棋王ともに13期獲得)を残しているが、こと棋聖戦に限っては6期のみ。それでも永世棋聖の権利を持っているのはたいしたものだが、七冠以後の獲得は1期のみ。同世代の佐藤棋聖との対決にも期するものがあるだろう。
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Commented by hosokawa18272 at 2005-05-12 23:08
「持将棋ルール」って、片方が24点以下の状態で、
両者が合意に至るとは、とうてい思えないので、
あってなきようなルールのような気がしますが、
その辺はどうなんでしょ?
Commented by mitsuboshi03 at 2005-05-13 21:40
まず相手の王様が詰まないことが前提条件。
詰むんならとっとと詰ませましょう(笑)
片方が24点未満の場合は、駒が取れそうなら駒を取りにいきますし、駒が取れそうもないときは残念ながら投了、ってことになります。だいたい持将棋になりそうなときは、成り駒の群れができてます。取れないって(苦笑)
で、両方24点以上だったら持将棋、というわけです。
アマチュアでこのルールを使うのは大きな将棋大会くらいです。
このときは、上にも書いた通り24点が27点になって、どっちも駒を取れないと判断するまで駒を取り合う悲惨な戦いが繰り広げられます(鬱)

将棋の解説がメインだったんで、ちと説明足らずでした。
こんなんでいいですかね?
Commented by hosokawa18272 at 2005-05-14 07:08
ヘタに持ち駒を投入すると、逆効果のパターンもありうる。って事ですな。
しかし、プロでもこうなる事ってあるんですね。
えんじ先生の将棋のようだ・・・・。(爆)
by mitsuboshi03 | 2005-05-11 00:30 | 将棋 | Comments(3)

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