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かんたん△8五飛型横歩取り講座 

えー、今回のお題は、こちらの方からリクエストのありました『かんたん△8五飛型横歩取り講座』でございます。
なお、この『かんたん△8五飛型横歩取り講座』の「かんたん」は、「サルでも判る」という意味ではなく、私が書くのがとっても、簡単という意味ですので(爆)

以前竜王戦第2局を書いたときに、こんなのとか、こんなのを書きましたが、今回は先手側・後手側からどんな方針で手を進めていくのか、という点について書くことにします。
まずは図をご覧下さい。

かんたん△8五飛型横歩取り講座 _b0017164_17274470.jpg左の図は△8五飛型横歩取りの基本形の1つです。これを叩き台にして、先手側・後手側の方針を書いていきます。

☆後手番の方針
なんだよー、先手番から話をするのが普通だろー。
という声もあるかと思いますが、これにはちゃんと理由があります。
なぜなら、この形で主導権を握っているのは後手番だから。
後手番より一手早く指せるはずの先手番ではなく、後手番が主導権を持って指せるというのがこの戦法最大のメリット。
なぜ主導権を握っているかといいますと、この局面は先手番の陣形にはまだまだ発展の余地があるが、後手番はすでに戦闘準備が整っているからです。
したがって、後手番はせっかく取った主導権をなるだけ先手番に渡さないよう、攻めて攻めて攻めまくるようにすることが重要なポイントとなります。
また、先手番と後手番で各々の王様の囲いを比べてみると、後手番の方が飛車の打ちこみに強いのも後手番にとっては心強いところ。
さて、これらのメリットを生かした狙いは・・・。

①飛車交換
先ほど申し上げた通り、後手番の方が飛車の打ち込みに対して強い囲いをしています。
となれば、さっさと飛車交換して例えば△2九飛と打ちこむような攻め合いに持ちこみたいところ。
飛車交換と書きましたが、他の駒で相手の飛車が取れるならなおさらグッドです(笑)

②駒損覚悟の攻め
①とダブる要素もありますが、今の王様の囲いならば、攻め合いは後手番有利。
もっと固い王様の囲いは他に穴熊や美濃囲いなどいくらでもありますが、この戦法は大駒を交換しての攻め合いがすぐにおきるため、固く囲う暇や隙がありません
相対的な王様の囲いの固さに、これほどはっきり差が出る戦法はそうそうないです。
王様の囲いの固さは、相手との差がどれだけあるかが重要なのです
固さに差があるうちは、駒損してもかまいませんからとにかく攻めをつなげることたとえ角損でも飛車損でも、先手玉を追い詰められれば文句無しです。
考え方は、穴熊戦法に似てますね。

③両桂+飛車での中央からの攻め
後手番からの有力な攻めの一つが、盤の中央、5筋からの攻め
この後先手番から▲3三角成△同桂と角交換することが多いですが(先手番の狙いはあとで述べます)、このときまず3三に上がった桂馬を4五へ、7三にある桂馬を6五へそれぞれ跳ね、飛車を5筋へ振ります。

かんたん△8五飛型横歩取り講座 _b0017164_18171596.jpgそうすると、たとえばこんな形になりますね。あとは桂馬を成ればいいだけです。
まあ、こんなにうまくいくことはまずないですが、一応の狙い筋ということで覚えていただければ幸いです。


☆先手番の方針
さて、今度は先手番の考え方です。
先ほど、先手番の陣形にはまだまだ発展の余地があるが、後手番はすでに戦闘準備が整っている。よって、後手番が主導権を持って指せる
と書きましたが、先手番もアホではないので、そんなことを無条件で許しているわけではありません。後手番が主導権を握ったのにはちゃんと代償を払ってます。その代償をいかにうまく活用するか。そこに勝利の鍵があります。
代償は、先手番の陣形にはまだまだ発展の余地があるが、後手番はすでに戦闘準備が整っているの中にあります。この言葉、裏を返せば先手番の陣形にはまだ良くなる可能性があるが、後手番の陣形にその可能性はないということです。
よって、先手番の方針は・・・。

①ゆっくり指す
王様の囲いに差があるので、今からドンパチするのは後手番有利
となれば、戦いはせいぜい小競り合いにとどめ、ゆっくり指すのが得策。
ゆっくり陣形を整えて待ちに徹すれば、陣形の発展の余地がない後手番はムリヤリ攻めるしか手がありません。
最初の図からだと、たとえば▲4六歩から▲4七銀を目指すのが有力な手の一つです。これがこないだの竜王戦第6局で取り上げた『世田谷南部システム』ですね。
後手番の無理攻めを上手く受け止めてやれば、あとは豊富な持ち駒でのカウンターが火を吹きます

②飛車交換は避ける
これをやると後手番が有利なのは上で書いた通り。
先手番の方針の①ゆっくり指すにも反します。
ゆっくり指して、後手番を待ちハメしてあげましょう。

③挟み撃ち
また一番最初の図に戻りますが、先手は飛車が居る2筋3筋を軸に攻めるのが基本ですが、そうすると後手番の王様が△5二玉から6筋7筋方面へ逃走することがよくあります。したがって、先手の持ち駒などで事前に逃走経路をふさいでおくことはとても重要です。
これを『待ち駒』と呼んで批判する方もいらっしゃいますが、本当は『縛り』という立派な手筋の一つですので、しっかりマスターしておきましょう。

④後手の桂頭
先ほど後手番の方針③で、先手番から▲3三角成△同桂と角交換することが多いと書きましたが、そうすることによって3三に動いた桂馬の頭を狙うのが先手番の有力な攻めの一つです。一例を上げるとこんな図になります。

かんたん△8五飛型横歩取り講座 _b0017164_1845488.jpgここから先手が▲3四歩と突けば桂馬が死にます。これもこんなにうまくいくことは少ないですが、これも一応の狙い筋ということで覚えていただければ幸いです。


以上、私のできる限りで両者の狙いについて書かせてもらいました。
あと、この戦法のポイントを一つ上げるとすれば、

50~60手くらいで山場を迎える

ことが上げられます。
今回の竜王戦だとちょうど一日目の終わりから、二日目の午前中にかけてくらいでしょうか。
ちなみに、最初の図でちょうど31手目です。
この辺りの指し手が勝敗の分かれ目になりますので、自然と対局者の消費時間も長くなります。そういったところにも注目して見てもらえればと思います。

『かんたん』と書いた割には、いつも通り長くなってすみません。
今後のタイトル戦などの記事を見るときに、これがお役に立てればと思います。
Commented by hosokawa18272 at 2004-12-25 10:00
どーも。リクエストに応えて下さり感謝。
今回のは特に、かつての「タクテクス」に連載されてた『作戦級講座』みたいで面白かったでつ。
後手番の考え方としては、「先手はゆっくりじっくり囲ってるなー。よし横歩取りで電撃戦ジャー」←これでいいんすか?
あと、「横歩取りは桂がいのち」と。
自分の場合、いざ実戦となると「うぉー。突進あるのみじゃー」となって、悲惨な負け方をします。やっぱ理論は大事ですな。でないと、
「将棋なんてクソゲーっす!」になるわけね。

いつかは、他の基本戦法や練習問題などもキボンヌ(爆)
Commented by mitsuboshi03 at 2004-12-26 20:31
ういー、どーもー。
もーへろへろっす。

>『作戦級講座』みたいで面白かったでつ
ありがとやんす。だいぶ「かんたん」にしてますけど。

>←これでいいんすか?
先手番は、緩やかにいくか急戦でいくかを選択できますが、
後手番には、緩やかにいく選択肢はありません。
「いーちーど決めたーらー、二の足ふーむーなー♪」

>あと、「横歩取りは桂がいのち」と。
後手番は、飛車、角、桂馬と歩で攻めるしかないので、桂馬がどれだけ働くかは重要ポイントのひとつ。
書くの忘れちゃった、てへり。
一方、先手番は銀なんかが中央へ進出するようなゆっくりした展開に持ちこみたいところです。

>いつかは、他の基本戦法や練習問題などもキボンヌ(爆)
思い出したころに、またやります(笑)
by mitsuboshi03 | 2004-12-24 19:03 | 将棋 | Comments(2)

スポーツ、将棋、ミリタリー、オタクネタ、地元長野ネタなど節操なしに書きまくります


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