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消化不良 (竜王戦第3局)

はい、土日はいつもの通り将棋の時間でございます。
今回取り上げますのは竜王戦の第3局。
相変わらず長くなりそうですので、その辺はご了承を。

え、いまさら遅い?
終わったばっかりの第4局の方をやれ?
という声はもっともだと思いますが、あえて順を追うことにします。

なぜ取り上げるのが遅くなったのか。
今回は棋譜だけ並べると一方的に殴られて終わり、という一局なので好感度がひよよよんと低下(爆)していたのが原因であります。その後、いろいろ情報を集めてみたところ、実はそうでもなかったらしいので、急所を中心に話を進めていきます。

今回の将棋は第1局と同じ相矢倉。第1局は後手の森内竜王が急戦調の注文をつけましたが、今回は互いにじっくり囲い合う本格派。矢倉党の血が騒ぎます

消化不良 (竜王戦第3局)_b0017164_2110962.jpg図は現在の矢倉の最新型の一つ。先手は、私が将棋を始めたころから最良の攻撃態勢と言われている4六銀型。後手はそれに対する現在最高の回答と言われている型。
私が高校時代に将棋部でバリバリ負かされていたころ(涙)は、ここから▲9六歩と端を受けてから(受けないと後で王の逃げ道が限定される)、▲1五歩や▲5五歩と歩を突き捨ててから3五歩から突撃開始、というのが定番でした。
が、どうも一時期のように、ここから最後まで殴りつづけて即死コンボ完成、というわけにはいかないようで、▲9六歩の代わりに▲9八香と穴熊を目指すのが最近の流行。先手の渡辺挑戦者は、4六まで進出した銀をバックして、金銀四枚の穴熊に囲う作戦に出ますが、後手の森内竜王は機敏に△7三桂から△9五歩と攻勢を見せることで、渡辺挑戦者にゆっくり囲う暇を与えません。森内竜王、序盤をリード。

次の図は、後手が先に7筋から開戦すれば、先手も1筋から手をつけてと、お互いにパンチを打ち始めたところ。後手の森内竜王がリードを奪った効果がすでに出ています。
先手の穴熊は、本来8八で穴熊にふたをしている駒が銀ではなくて金になっている上に、金銀四枚の穴熊を目指したはずなのに、右銀が5八とどっちつかずの位置。これが7八にでもいれば、だいぶ固さが違ってくるのですが。
一方後手は2一に王を構える菊水矢倉に近い形。特に上からの攻めには穴熊以上の固さを誇ります。飛車を横から打たれると弱そうですが、4二の銀を3一に引けば磐石。この囲いは最近ミレニアムと呼ばれています。死語のニオイがしますが(爆)
ここから後手の森内竜王の攻めが炸裂します。

消化不良 (竜王戦第3局)_b0017164_21303645.jpgここで△8七桂不成が強烈な一手。先手は▲同金と取りますがそこで△7六歩と打って2ヒットコンボ完成。何で取ってもその駒が△7五歩で死にますし、▲8八銀と下がるのは△8六歩から攻められてお前はもう、死んでいる。しかたなく右の金で取って△7五同角と金を取られたのが次の図になります。


消化不良 (竜王戦第3局)_b0017164_21543882.jpg一発入ったかと思われたところですが、ここで▲7八歩と辛抱したのが、渡辺六段が挑戦者たる力量を示した一手。渡辺挑戦者は、4七の飛車が遠く7、8筋まで利いているので後手の攻めを受けきれると思っていたのですが、実はどうせ辛抱するなら▲7八桂と8筋を守る方が勝ったとのこと。今回は、△9六歩▲同歩△8六歩から細い攻めを見事につなげた森内竜王が、渡辺挑戦者の辛抱をさらに上を行く結果となりました。
森内竜王が三冠を奪うまでになった原動力が、この踏み込みの良さ。もともと緻密な読みには定評があったのですが、緻密に読もうとするあまりギリギリのところで踏み込めない弱さを解消したところが良く出ているところだと思います。

実はこの後渡辺挑戦者もかなり粘ったのですが、このレベルになると、今回くらいのリードはセーフティリード。まず間違えません。野球に例えると、お互いに全盛期の佐々木だの赤堀だの大塚だのといった抑えの切り札を何枚も抱えている状態で、7回からは1点でも取れたらラッキーという状態。となると、先発投手から何点取れるか、ということになるわけで、今回は渡辺挑戦者側が先に崩れて奪ったリードをそのまま守りきった形になりました。

最後に、個人的な印象を一つ。
今回の矢倉は先手が金銀四枚の穴熊を目指した形になりましたが、矢倉は先に攻めたもの勝ちと教えられて育った私としては、ちょっと消極的で、先手番が好む型ではないかなと思います。あくまで私見ですが、先攻ができずに穴熊にせざるを得ないのであれば、先手の攻撃態勢に改善の余地があるような気がします。
穴熊は手数のかかる囲いの割に、縦からの攻撃にはそれほど強くないんですよね。
Commented by hosokawa18272 at 2004-11-28 09:18
将棋の世界も「攻撃は最大の防御」っていうことですか?
前にも書きましたが穴熊はなかなか難しい戦法というイメージが・・・
ま、素人の言う事ですけど。
Commented by mitsuboshi03 at 2004-11-30 10:49
いつもコメントどもです。助かります。
穴熊はきちんと組めれば、終盤になっても自分の王様のことを考えずに済むのが楽でいいです。特にアマチュアの大会は持ち時間が少ないので主流の戦法ですね。
ちゃんと組めるようにするにはいろいろ覚えなきゃならないところもあるのですが、それは他の戦法も多かれ少なかれあることですから(笑)
以前はなんとなく組んでいれば、あとは大雑把に飛車角交換に持ちこんでそのままフィニッシュ!・・・だったのですが、最近は仕掛ける前の陣形にも神経を使わないと作戦負け、ということも多いです。
by mitsuboshi03 | 2004-11-27 22:34 | 将棋 | Comments(2)

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